幼稚園・保育所における、多動・衝動的傾向を示す幼児の観察・聞き取りを行い、実践・事例を検討し、援助方法について考察した。 1.幼児のクラス集団から「逸脱」しているようにみえる子どもの理解と集団活動における配慮・援助の工夫、集団での関係づくり・学級づくりのための指導のポイントを、保育実践・事例の考察をもとに、理論化しつつ提起した。活動の見通しを持たせること、安心して期待をもって取り組める活動を組織すること、自分で活動に区切りをつけて切り替えること、小グループでの活動を支えに共感的なかかわりをつくること、集団での納得と合意・相互理解をひきだすことなどの重要性が認められた。平成19年度から特別支援教育がスタートしたが、教育実践を進める理論と方法が明らかにされていない状況がある中で、通常学級での特別支援教育について、学級づくりを柱に、その実践の方法を展望している点に意義がある。 2.異年齢保育の中で、多動・衝動的傾向を示す幼児が、落ち着いて生活し、友達との関係を発展させていく変化がみられた。異年齢保育の意義と、その中でみられる子ども達の関係、保育者の指導・援助の方法について整理した。とくに、表面的にできた・できなかったという点検主義に陥らない目標の設定と評価のしかた、子どもが安心感をもって生活し、子どもどうしの認め合いによって、自尊感情・自己肯定感が高まる点について考察した。また、異年齢保育を実施していくうえでの課題についてもまとめた。異年齢保育の方法についての理論化が進んでいない状況の中で、この方法に着目し、多動・衝動的傾向を示す幼児にとっての効果を検討している点に意義がある。
|