研究概要 |
3年間の研究結果より。 「世代間交流」の必要性が高いと理解されてはいるが,実際に行なおうとする場合に,「環境調整」「物的資源」そして「人的資源」の確保において困難を抱えているということが分かってきた。このような現状の中,世代間交流を支えていく人材育成のための教育と現場トレーニングのプログラム作りが課題である。今回の研究結果より明らかになってきた人と人を結びつけ、集団の中で「共有体験」を得やすいような環境を創出することができるプログラムの開発が必要なのである。 「世代間交流プログラムの実施」を通して,音楽そのものがコミュニケーションツールとして機能し,人と人を結びつけ,集団の中で「共有体験」を得やすいような環境を創出することが可能であるということを証明できた。この「共有体験」は音楽プログラムのみに限らず,他のプログラムにおいても可能ではあるが,音楽の機能がもつ可能性は大きいといえるであろう。参加する個人個人の中にお互いを尊重し合う態勢ができ,発信することと受容することを自然に行えるようになって,世代間交流プログラムにおける一つの到達点に達するのではないだろうか。 音楽プログラム(ドラムサークル)の中では,誰かが何かを「教える」,そして「教えられる」といった関係は存在せず,誰かが発した音を受け止めて「共有」し,その「共有」の輪が幾重にも広がっていくといった音による交流の中で,自分を「受け止めて」もらうという体験が同時に進行していく。すでにそこには世代間の違いは存在せず,多世代の人々が一体となる瞬間の体現が可能であった。このような人と人との相互作用と受容の関係は,今後の世代間交流プログラムのあり方や考え方において,大きな示唆を与えるものであると考える。
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