本研究の目的は、地域通貨が地域のコミュニティー形成に果たす役割と生活者に及ぼす影響を明らかにすることである。平成18年度研究実施計画は、1.地域通貨「クリン」使用者追跡調査、2.地域通貨「おうみ」調査依頼と対象者の選定、であった。 1.地域通貨「クリン」使用者追跡調査については、平成13年度に実施した地域通貨「クリン」(北海道夕張郡栗山町)使用者を対象とした意識調査の追跡であるが、本年度は、平成13年度調査の再集計と、予備調査として、平成13年度聞き取り調査の対象者に面接調査を実施した。再集計の結果から、地域通貨の使用頻度が無償労働の意識形成と地域参加の動機付けの要因となることがわかった。また、聞き取り調査からは、(1)地域通貨導入当時の目的がほぼ達成されて、新たなコミュニティー形成の段階に入ったこと、(2)そのため地域通貨の役割や機能の見直しが迫られていること、などが明らかになった。(3)この背景には、ここ5年間の社会経済的な変化、特に景気の悪化による地域経済の状況や生活状態の変化があるのではないかとの仮説を得た。これらの知見をふまえて、平成19年度に自記式質問紙を用いた郵送法による追跡調査を実施する。 2.地域通貨「おうみ」(滋賀県草津市)調査依頼と対象者の選定については、調査協力者の状況により調査実施が困難になった。そのため、「おうみ」に代わる調査対象を選定するために情報収集を実施しているが、地域通貨を提携先の商店や企業の事業主の意識から分析するという目的に合致する対象は見つかっていない。
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