本研究の目的は、地域通貨が地域のコミュニティー形成に果たす役割と生活者に及ぼす影響を明らかにすることである。平成19年度の研究実施計画及びその成果は次の通りである。 1.地域通貨「クリン」使用者追跡調査 平成19年10月に、平成13年度に実施した地域通貨「クリン」(北海道夕張郡栗山町)使用者を対象とした意識調査の追跡調査を実施した。調査対象者は平成13年度調査対象者及び平成19年度10月加入の新規参加者を含むクリン参加者296名(600票配布、有効回収率49.3%)、調査方法は自記式質問紙を用いた郵送法による。調査項目は、属性、クリン使用状況、クリンに対する理解度、生活意識、生活意識・行動等の変化である。調査結果であるが、クリンへの参加期間及びクリン使用頻度との関係を分析したところ、新規参加者に比べ参加期間が長い対象者は、質的な豊かさを重視し、無償労働や地域・環境に対する意識も高い傾向があった。また、参加期間が長い対象者の中では、使用頻度と質的な豊かさを重視する意識とに相関があり、地域通貨の使用が質的な豊かさ意識を形成するといえる。さらに、平成13年度調査結果と平成19年度調査結果の比較による生活意識・生活行動の変化について分析を進める。 2.聞き取り調査による質問紙調査の補充 調査対象者は平成13年度の聞き取り対象者である行政関係者とクリン参加者3名である。平成13年度からの地域の経済・社会的変化、行政の施策、クリンの状況について聞き取りを行った。地域の経済状況の悪化に伴いクリンの活動が停滞したこともあったが、一応の地域への定着が見られる。しかし、運用システム上、個人単位の参加・活動の限界と利用を待っているだけでは活動が発展しないことから、グループでの参加を可能にし、積極的な地域活動を提案するなど住民の資質や現在の地域のニーズに対応した新たな展開が必要とされている。
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