研究概要 |
新鮮なカリン(Chaenomeles cinensis)果実について、注目されていなかった種子表層から冷水に分泌される粘性多糖の構造及び物性およびその利用についての検討を行い、その結果明らかとなったカリン種子粘質多糖の構造と粘性発現との関連におけるユニークな点、つまり、粘性発現にはこの粘質多糖の主要成分であるglucurono-arabinoxylanとxyloglucanの二種の多糖が相互に強く分子鎖間で結合することが必須でありxyloglucanを酵素分解、またはグルクロン酸のカルボキシル基の還元で粘性が顕著に低下すること、および適度な保湿性があること等についてまとめ、論文として発表した(「カリン(Caenomelese sinensis)種子由来の粘性多糖の糖鎖構造と"とろみ"特性」、微量栄養素研究,vol.26、pp46-49、2009)。また、カリン種子の粘性多糖水溶液の粘性は20℃から60℃、またpH3から9の範囲で安定であり、通常の食生活で使用される濃度の塩化ナトリウムおよびシュクロース添加においても粘性にほとんど変化がなく、調理加工操作における物性の変動はあまりないと考えられる。このことは増粘剤として利用する際の有利な点と考えられる。 このように天然素材由来成分であるカリン種子表層由来の粘性多糖は、近年問題となり将来も増加が予想される嚥下困難な高齢者等の介護食への利用、介護食用添加剤のみならず、一般食品用の乳化剤等としての活用も期待できるとかんがえられる。
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