研究概要 |
高齢者は義歯を装着している比率が高く,口腔機能も低下しているので,線(繊)維の多い食肉やゴボウなどの根菜類は食べにくい食物といえる。そのため,高齢者施設では繊維の多い硬い食物は誤嚥の危険性が高い「きざみ食」にする場合が多い。そこで,咀嚼しやすく,しかも誤嚥の誘因となる口中の残渣を減少させるような,調理上の工夫を提案することが必要といえる。19年度は,高齢者向けに酵素を用いて調製したゴボウについて,破断測定を行い,さらには若年者による食べ易さの評価を官能評価および筋電図測定による咀嚼試験によって行った。 ゴボウに0.5%セルラーゼ溶液,0.5%ペクチナーゼ溶液および0.5%セルラーゼ・ペクチナーゼ混合溶液(混合酵素溶液処理)を用い,含浸法により軟化処理を行い,試料とした。破断特性の測定を行った結果,コントロールである酵素未処理ゴボウ試料では破断点がひずみ80%で認められ,しかも破断力が大となった。一方,混合酵素溶液処理を行ったゴボウ試料には明確な破断点は認められず変曲点が存在したが,コントロールに比較し,有意に破断力が低下した。食べ易さの評価では,コントロールに比べ,混合酵素溶液処理を行ったゴボウ試料が明らかに軟らかいと評価された。咀嚼試験を行ったところ,破断力が大きいコントロールに比べ,咀嚼回数が少ない傾向にある混合酵素溶液処理を行ったゴボウ試料の咀嚼時間は有意に少ないことが認められた。また,最大振幅,筋活動量について検討したところ,混合酵素溶液処理を行ったゴボウ試料が有意に小さいことが認められ,酵素(セルラーゼ・ペクチナーゼ混合)処理を行うことにより,軟らかく,咀嚼しやすいことが明らかとなった。
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