食物繊維が有する様々な生理機能の作用機序の第一段階として消化管内容物の物理的性状の変化、つまり食物繊維の摂取に伴う消化管内容物の保水性やカサ、粘度などの物理的性状の変化が考えられる。従って食物繊維の量や物性などの物理化学的性状の違いはその生理機能を大きく左右する。これらの性状は調理方法によって変化すると推測され、食物繊維の摂取量や摂取回数などの摂取方法も消化管内容物の物理的性状変化に影響を与え、食物繊維の生理機能を左右すると考えられる。そこで本研究では食物繊維を含む食品の調理方法ならびに摂取方法の違いが生理機能発現に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 平成18年度においては、調理方法の違いが食物繊維の物理化学的性状に及ぼす影響を検討した。各種の方法で調理することができ、食物繊維を比較的多く含む食品としてさつまいもを試料とし、加熱方法の違い(蒸し加熱、電子レンジ加熱)が食物繊維の性状に及ぼす影響を比較した。その結果、プロスキー変法により定量した水溶性食物繊維量は、生のさつまいもに比べて、蒸し加熱、レンジ加熱後も変化しなかったが、不溶性食物繊維量は生のさつまいもやレンジ加熱後に比べて、蒸し加熱後において低い傾向がみられた。加熱時間の長い蒸し加熱では加熱中にデンプンの不溶化などにより不溶性食物繊維量が増加する可能性が示唆された。水溶性食物繊維の粘度は、生のさつまいもやレンジ加熱後に比べて、レンジ加熱後のさつまいもでは高い傾向がみられた。レンジ加熱における急激な温度上昇や水分含量の変化が水溶性食物繊維の性状に影響した可能性が考えられた。不溶性食物繊維の保水力は蒸し加熱、レンジ加熱ともに生のさつまいもに比べて低かった。 平成19年度においては、調理方法の違いによるこのような食物繊維の性状変化が生理機能発現に及ぼす影響について動物実験により検討を行う。
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