食物繊維が様々な生理機能を発現する第一段階として、消化管内容物の嵩や粘度などの変化があげられる。摂取する食物繊維の量や物性はその生理機能を左右すると考えられるが、これらは調理方法によって変化することが推測される。そこで本研究では調理方法の違いが食物繊維の性状と生理機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。18年度ではさつまいもの加熱方法の違いが食物繊維の性状に及ぼす影響を調べ、その結果、蒸し加熱したさつまいもでは生のさつまいもやレンジ加熱後に比べて、不溶性食物繊維量が高い傾向がみられた。また、レンジ加熱したさつまいもに含まれる水溶性食物繊維は、生のさつまいもや蒸し加熱後に比べて粘度が高い傾向がみられた。19年度においてはこのような食物繊維の性状変化が生理機能に及ぼす影響を動物実験により検討した。 加熱方法が異なるさつまいもを凍結乾燥し、添加した飼料をラットに与え10日間飼育した。消化管組織重量を測定した結果、盲腸と近位結腸はさつまいもの摂取によって組織重量が有意に増加した。また、遠位結腸は生あるいはレンジ加熱したさつまいもを摂取したラットでは無繊維飼料を摂取した対照ラットと組織重量に差は認められなかったが、不溶性食物繊維を多く含む蒸し加熱したさつまいもを摂取したラットでは有意に増加した。遠位結腸組織に及ぼす影響はさつまいもの加熱方法によって異なることが示唆された。消化吸収機能に及ぼす影響について、飼料効率と血中脂質濃度の測定を行った結果、いずれもさつまいもの摂取ならびに加熱方法の違いによる影響は認められなかった。大腸内発酵性について盲腸内容物中の短鎖脂肪酸濃度を測定した結果、生のさつまいもを摂取した場合に比べて、蒸し加熱あるいはレンジ加熱したさつまいもの摂取によってプロピオン酸濃度が上昇する傾向がみられた。
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