食物繊維が様々な生理機能を発現する第一段階として、消化管内容物の嵩や粘度などの変化があげられる。摂取する食物繊維の量や物性はその生理機能を左右すると考えられるが、これらは調理方法によって変化することが推測される。そこで本研究では、食物繊維含量が比較的高く、摂取する際には加熱調理が必要なさつまいもを試料とし、加熱方法の違いが食物繊維の性状と生理機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 生のさつまいもと蒸し加熱あるいは電子レンジ加熱したさつまいもの食物繊維を定量した結果、不溶性食物繊維は加熱調理により増加する傾向がみられ、加熱時間の長い蒸し加熱の方が電子レンジ加熱よりも増加する傾向がみられた。一方、電子レンジ加熱したさつまいもの水溶性食物繊維は、生や蒸し加熱に比べて粘度が高い傾向がみられ、電子レンジ加熱による急激な温度上昇が水溶性食物繊維の性状を変化させた可能性が考えられた。 このような調理に伴う食物繊維の性状変化が、食物繊維の発酵性に及ぼす影響を豚の腸内細菌を利用したバッチ培養により調べた結果、粘度の高い電子レンジ加熱したさつまいもの水溶性食物繊維は発酵性が低かった。また、加熱方法の異なるさつまいもを凍結乾燥して飼料に添加し、ラットに与えて10日間飼育し、消化管の形態と機能に及ぼす影響を比較した。消化管の形態に及ぼす影響として組織重量を測定した結果、盲腸と近位結腸はさつまいもの摂取によって組織重量が増加したが、加熱方法の違いによる影響は認められなかった。しかし、遠位結腸は不溶性食物繊維含量の高い蒸し加熱したさつまいもを摂取したラットでのみ組織重量が増加し、加熱方法によって影響が異なることが示された。消化吸収機能に及ぼす影響について、飼料効率と血中脂質濃度の測定を行った結果、いずれもさつまいもの摂取ならびに加熱方法の違いによる影響は認められなかった。
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