研究課題
基盤研究(C)
高齢者の摂食・嚥下に関して、加齢により咀嚼・嚥下機能が低下した人や脳血管疾患の後遺症としての嚥下障害が生じた人にも安全でおいしく摂取できる嚥下食が求められている。そこで、高栄養食品である豚肉を用い、加熱処理と高圧力利用の加圧処理によるゲルを調製し、食肉タンパク質のゲル形成能の違いを検討し、豚肉と水の混合割合を変えてゲルのソフト化を試みた。各ゲルの物性値、電顕像による微細構造変化について調べ、食肉ゲルの官能検査および嚥下造影検査を行い、食味や嚥下動態を評価し、加圧食肉ゲルの嚥下食への利用について検討した。豚腿肉を試料とし、加水(豚肉:水=1:1)後、加塩して混合し、加熱または加圧処理を行い、加熱ゲルおよび加圧ゲルとした。加熱は沸騰水湯浴中で80℃に達するまでの10分間行い、加圧は400MPaの静水圧で20分間加圧し、加圧後、ウォーターオーブンで加熱して加圧・加熱ゲルとした。加圧・加熱ゲルのテクスチャー値は、加熱ゲルに比し、軟らかく、保形性があり、高齢者用食品規格基準に準拠していた。電顕観察によるゲルの組織構造は、加熱ゲルでは塊状を呈し、加圧ゲルでは加圧により形成されたレース状の網目構造がみられ、各処理による食肉タンパク質のゲル形成能の違いが示唆された。官能検査は加熱および加圧・加熱ゲルを試料とし、5段階評点尺度法で食味を評価した。加圧・加熱ゲルは光沢、弾力、飲み込み易さ等の項目について良好な評価を得た。嚥下造影検査では加熱ゲルおよび加圧・加熱ゲルを用い、健常な若年女子を被験者とした。加圧・加熱ゲルは加熱ゲルと比較して嚥下回数が少なく、嚥下時間が短く、口腔内の残留が認められず、スムーズな嚥下と評価された。以上の結果から、高圧処理による豚肉ゲルの物性とゲル形成能は、加熱ゲルよりも加圧・加熱ゲルの方が嚥下食として適応するものであり、加圧食肉ゲルの嚥下食への利用性が示唆された。
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Jounal of Food Biochemistry (印刷中)
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