高栄養食品である豚肉を用い高圧力利用の加圧処理ゲルを調製し、加熱処理と比較して畜肉タンパク質のゲル形成能の違いを検討した。さらに、咀嚼・嚥下困難者用の保存性に優れた冷凍状態で流通可能な製品化を試みた。 豚挽肉を用い、1)加熱挽肉2)1:0.5加熱ゲル(加水後加熱処理)3)1:1加熱ゲル(加水後加熱処理)4)1:0.5加圧・加熱ゲル(加圧後加熱)5)1:1加圧・加熱ゲル(加圧後加熱)6)ペースト(加水後、加熱)の豚肉加工品を調製した。 1:1加圧・加熱ゲルのテクスチャー値の硬さでは加熱挽肉、1:0.5ゲルと比較して軟らかく、嚥下困難者用食品(厚生労働省2009)の許可基準IIIの規格範囲内であった。タンパク質ゲル形成能について、豚肉抽出アクトミオシンおよび加熱、加圧、加圧・加熱ゲルのSDS-PAGEで、加圧処理は低分子タンパク質を遊離しやすく、その遊離したタンパク質の再結合が示唆された。これらのゲルの微細構造は、加熱では凝集物の集合による塊状、加圧では網目構造を呈し、加圧・加熱でも構造は保持され、加熱と加圧では、ゲル形成機構の相違が明確になった。官能検査における1:1加圧・加熱ゲルが食感、食味の項目で良好と評価された。嚥下障害者の嚥下造影検査では、加圧・加熱ゲルでは咀嚼回数、咀嚼から食道入口部までの食塊移送時間および嚥下回数が加熱挽肉と比較して少なく、ペーストでは残留が多く認められた。これらのことから、1:1加圧・加熱ゲルは嚥下食として適応するもので、食肉タンパク質の高圧力によるネットワーク構造形成に起因すると考えられた。さらに、豚肉ゲルに大豆分離タンパク質を5%、7%添加し、加熱、加圧・加熱処理し、ゲル形成能の改良と冷凍品を調製した。5%、7%添加ゲルでは、離水率が低下し、付着性も低値を示し、テクスチャー値は許可基準の範囲内であった。加圧・加熱ゲルは嚥下食として有用であり、大豆タンパク質を添加することでゲル形成能が改善され、製品化への可能性が見出された。
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