【目的】本研究ではバナメイシュリンプ(Penaeus vannamei)における抗菌剤のオキシテトラサイクリン(OTC)及びオキソリン酸(OA)の体内動態及び残留特性を明らかにし、これらの残留抗菌剤が加熱調理によって、どのような影響を受けるのかを調べることを目的とする。本年度は昨年度OAを経口投与した筋肉及び殻の分析を行い、バナメイシュリンプにおけるOAのバイオアベイラビリティ、分布、排泄及び残留特性について検討した。さらに、残留する筋肉及び殻について「茹でる」、「焼く」、「揚げる」の加熱調理を行い、残留する抗菌剤の消長を調べた。エビ殻は酸・アルカリ処理されて、キチンに調製されている。それ故、酸・アルカリ処理によるエビ殻残留抗菌剤の消長についても検討した。 【方法】供試エビにはタイ国産バナメイシュリンプを用いて、チャンタブリ水産研究所で飼育・投薬実験を行った。筋肉及び殻におけるOAの分析をBond Elut C18による固相抽出法によりクリーンアップした後、蛍光HPLC法により行った。得られたデータをWinNonlin (ver.1.1)により解析した。抗菌剤が残留する組織について加熱調理(茹でる、焼く、揚げる)を行い、調理後、それらをHPLC分析に供した。残留エビ殻をHCl及びNaOHで処理後、HPLC分析に供して残留濃度を求めた。 【結果】筋肉におけるOAの最高濃度、最高濃度到達時間及び消失半減期は次のとおりであった。「10mg投与区」:0.31μg/g、4h及び23.8h、「50mg投与区」:2.02μg/g、4h及び22.5h。一方、殻における最高濃度、最高濃度到達時間及び消失半減期は「10mg投与区」:3.08μg/g、7h及び24.6h、「50mg投与区」:11.29μg/g、4h及び22.4hであった。残留OAは茹でることにより、40〜65%程度消失したが、焼く及び揚げるの加熱調理では、筋肉で10%、殻で20〜35%程度の消失であった。殻中の残留OAはアルカリ処理で70%程度の消失が認められ、酸処理でも60%の消失が認められた。
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