幼児期の子どもの摂食行為がどんな社会的資源に支えられ、どのような様式で、どのような経過を経て発達するものであるのかが検討された。今回の調査では3歳以降の子ども達の食事中の摂食行為と他者とのコミュニケーションを中心としたふるまいが分析された。3歳から5歳では給食は栄養摂取の場というよりもむしろ社交の場である。本研究ではこうした3歳クラス以降の子ども達の給食時における仲間や保育者との社会的交流の特徴を明らかにすることを目指した。その結果、以下の点が明らかになった。(1)保育者は子ども達に対して社会的なマナーや偏食解消を含む食べ方について指導するが、子ども達と楽しく会話する存在としての役割も同時に担う。(2)子ども達は、保育者の指導に対して、様々な形の「抵抗」を試みるが、それは多様な戦略を用いた交渉であり、社会的スキルの発達に寄与する。(3)幼児は他者と話しながら食べることが多く、従来こうしたふるまいは「ながら食べ」などといわれ、問題視されてきたものである。しかし、こうした行為も、食べるという行為に対するポジティブな態度を形成する上で重要であることがわかった。保育者もしばしばそのことを自覚した対応を行う。また、そうした食事中の会話は複雑な会話や言語使用の学習の場となっていた。年中、年長児は食事をしながら眼前にない事物や話題について複雑な会話を行う。言語学習の場として共食場面を捉え直す必要がある。 なお、本研究と本研究の先行研究を通して一児について0歳から6歳までの長期的な食事場面の映像資料を収集することができた。これは子どもの観察資料として貴重である。
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