【目的】長期の高脂肪食摂取は骨格筋の酸化系酵素活性を増大し、持久力を高めることが知られているが、肥満や高脂血症を発現し、必ずしもスポーツ選手にとって好ましい食事法とは言えない。ところで、これまで脂肪組織はエネルギーの貯蔵庫と考えられてきたが、近年、脂肪組織から数多くのサイトカイン(アディポサイトカイン)の分泌されていることが明らかになってきた。そこで、本研究では実験動物としてラットを用い、長期の高脂肪食摂取と持久的トレーニングが血中アディポサイトカインレベルに及ぼす影響について検討した。 【方法】実験動物として5週令のWistar系雄ラット32匹を用いた。これを脂質カロリー比が約16%の低脂肪食群と約60%の高脂肪食群に分け、さらに非トレーニング群とトレーニング群に分けた。トレーニングは週5日の頻度で水泳運動を負荷した。飼育期間終了後、ペントバルビタール麻酔下採血し、アディポネクチン、TNF-α、レプチン及びPAI-1をELISAにより測定した。 【結果及び考察】体重、副睾丸脂肪食期重量及び腸間膜脂組織重量は、食餌による影響が見られなかったが、トレーニングにより低下した。血中アディポネクチンはトレーニングによる影響は見られなかったが、高脂肪食群で約30%の低下が見られた。血中TNF-αは高脂肪食摂取により増加し、持久的トレーニングにより低下した。血中レプチンはTNF-α同様、高脂肪食摂取で増加し、持久的トレーニングで低下した。血中PAI-1はELISAキットの感度の問題もあり測定できなかった。 以上のことから、高脂肪食摂取はアディポネクチンレベルを低下し、TNF-αレベルを増大することによりインスリン抵抗性を発現し、逆に持久的トレーニングはこれらのレベルを改善し、インスリン抵抗性の発現の予防に作用することが判明した。
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