我々は、静岡県の特産物である沢わさび(Wasabia Japonica Matsumura)の根茎、葉、茎を用いて各種生物活性を検討しており、既にそれらの水またはエーテル抽出物が抗菌、抗カビ、抗酸化、抗変異、抗アレルギー等の作用を有することを明らかにした。本研究では、わさび葉抽出物が胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因物質の一つと考えられるH.pyloriに感染したスナネズミ(Mongolian gerbils)に対して、抗菌作用を示すか否か、またその際、胃粘膜表面の病理組織が回復されるか否かを観察した。その結果、沢わさび葉のエーテル抽出物の混餌投与により、胃粘膜上での出血スコアや障害スコアが有意に減少することを確認した。またわさび投与により、胃粘膜における02-、・OH、ONOO-、C10-などの活性酸素、活性窒素が消去されていることから、それらラジカルが抗菌活性等の発現に深く関与するものと考えた。 本県では、沢わさび根茎および沢わさび葉を摂取している地域では緑茶の消費量が多いことが明らかとなったことから、in vitroのモデル系において両者を混合して抗菌活性を調べたところ、相加的・相乗的に抗菌作用が見られた。現在、わさび生産地および非生産地におけるわさびと緑茶の消費量と胃がん等の発生率について疫学調査等を実施中であり、実験室的複合効果も検討中である。
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