研究概要 |
[目的]インスリン抵抗性を惹起する食事因子として高脂肪食特に高飽和脂肪酸食の関与を認めてきた。しかし、その機序は明らかでなかった。近年、インスリン抵抗性の分子機構が報告され、本研究ではインスリン抵抗性に関わるサイトカインと栄養との関係を明らかにする目的で、食事管理下で高脂肪食とサイトカインの関係をヒトで検討した。 [方法]平均BMI21.2kg/m^2、HbA1c5.0の健康な若年女性10名を対象に、エネルギー1700kcal,たんぱく質E比14%、脂質E比20%、S:M:P;3:4:3、糖質E比66%のControl食を5日間、20日間のWashout後、エネルギー、たんぱく質は同一とし、脂質E比30%、S:M:P;3:4:3の高脂肪食を5日間食事管理下で摂取して頂いた。Control食、高脂肪食の献立は同一とし、食品や調理法による血糖・インスリン反応への影響を除去し、穀類と油脂の量で調整した。各食の開始時に、早朝空腹時でのIn Bodyによる形態測定を行い、採血を行った。各検査食5日間負荷後の早朝空腹時に同様の形態測定と採血を行い、検査食の1食量で同一栄養比率に当る検査食により、Meal Tolerance Test(MTT)を行った。MTTでは、食前、食後30分、60分、120分の血糖・インスリンを測定した。またMTTの食前のTNF-α、LEPTIN、アデイポネクチンを測定した。本研究は天使大学倫理委員会の承認を得て施行した。 [結果]食事負荷による体重・体脂肪率の変化は各期共に認めなかった。MTTの血糖0'値はControl食が高脂肪食に比し高く、血糖0‘、30'、60‘、120'の総和(ΣPG)はControl食と高脂肪食の問に差を認めなかった。インスリン0'値には、検査食間に差を認めず、インスリンの総和(ΣIRI)は、Control食が有意に高い値を示し(p<0.01)、ΣIRI/ΣPGはControl食で有意に高く、HOMA-R,インスリン面積は食事間に差を認めなかった。TNF-αは高脂肪食で有意に高い値を示し(p<0.01)、高脂肪食時における体脂肪量とTNF-αの値との問に有意な正相関を認めた。Leptin,アデイポネクチンの変化は認めなかった。 [考察・結語]高脂肪食によりTNF-αの増加が認められ、TNF-αの増加は、肥満者でより顕著であることが示唆された。短期間の高脂肪食ではアデイポネクチンには影響は認めなかったが、長期に及ぶ高脂肪食はTNF-αを介してアデイポネクチンを低下させ、インスリン抵抗性を惹起する可能性を示唆した。脂肪酸組成の違いによるTNF-αについては次年度に検討予定である。
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