研究概要 |
食物抗原に感作されたか否かは特異IgE抗体価から判定されるが,現実問題としては,食物アレルゲンによるアナフィラキシー症状誘発能の有無が重要課題である。従って動物を用いて生体全体で評価することが必要とされる。そこで感作マウスにアレルゲン投与後,症状のスコア評価,直腸温及びマウスの自発運動量を測定して,各項目間での相関関係を求め,自発運動量の測定が食物摂取によって誘発されるアナフィラキシー症状を客観的に反映しする判定基準となることを明らかにするために,当年度は以下の実験結果を得た。 卵白リゾチーム(Ly)をアレルゲンとしてB10.Aマウスを腹腔免疫した。感作マウスに0,1,5,10および20μgのLyを静脈投与し、その後のアナフィラキー症状を直腸温、症状のスコア評価と共に、夜間15時間の自発運動量を測定した。これらの3つの指針の相関関係を求めたところ,3指標間に有意な相関が認められた。また,体温は2時間以内に平常温に回復したが,自発運動量の回復には7〜8時間を要した。この要因の解析のために,肥満細胞から放出されるヒスタミンの影響を調べるために,非感作マウスにヒスタミンを0,1,5あるいは8μmol/mouse静脈投与し、直腸温および自発運動量を測定した。ヒスタミンによって体温低下は認められたが,自発運動量の低下は全く認められなかった。更に、肥満細胞から放出される遅延型メディエーターのロイコトリエンD4を0.05あるいは0.01μmol/mouse静脈投与して、同様に直腸温および自発運動量を測定した。その結果,ヒスタミン同様に体温は低下したが,自発運動量は低下しなかった。自発運動量低下には更に他の要因が影響する可能性が示唆された。自発運動量の測定はマウスの長時間の体調判定が可能であり,アナフィラキシー症状を顕著に反映し,かつ客観的な数値判断が可能な有益方法であった。
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