本研究は、マウス自発運動量を指標とした食物のアレルギー誘発性の判定と加工食品評価への応用として、感作マウスに卵白アレルゲン投与後、直腸温及び自発運動量を測定した。その結果、両測定項目間に高い相関関係が観察され、自発運動量の測定がアレルゲン再暴露によって誘発されるアナフィラキシー症状を客観的に反映し、且つ数値的な判定基準となる可能性が示唆された。しかしながら、興味深いことに、アレルギー原因物質とされるヒスタミンやロイコトリエン投与によっては直腸温の一過性の低下しか観察されず、自発運動量の低下は誘導されなかった。したがって、アレルゲン感作マウスの抗原特異的アナフィラキシー症状は、その原因物質とされるヒスタミンやロイコトリエンの作用のみではない可能性が示された。そこで、アナフィラキシー発症のメカニズムについて、IgE-マスト細胞-ヒスタミン系とともに、IgG-マクロファージ-PAF系の関与についてマスト細胞欠損(WBB6F1-W/W^v)マウスを用いて検討を行った。その結果、マスト細胞の有無にかかわらずアナフィラキシー症状は発症すること、さらにPAF受容体アンタゴニスト投与によってアナフィラキシー症状に対する抑制効果が観察されることが明らかとなった。さらに、非感作マウスに、感作マウス血清から精製されたIgG投与によって、受身的アナフィラキシーが発症することも明らかとなった。 以上のことから新しい食物アレルギー症状の実験動物評価指標としての自発運動量の有効性が示され、今後、様々な加工食品のアレルギー判定基準のための研究に広く活用されるものと思われる。さらに、IgG-マクロファージ-PAF系を介した「新アナフィラキシー発症仮説」の検討が急務であることが示された。
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