歯周病は、歯を支えている周囲組織の病気であり、生活習慣病のひとつである。この疾患は、主に成人や高齢者の疾患と考えられていたが、現在では歯周病のひとつである歯肉炎の罹患率が小児で高くなっている。これらの口腔内疾患による炎症や歯の喪失は、摂食・嚥下の機能低下や全身疾患の原因となると予想されている。このような歯周病のひとつの原因として活性酸素や活性窒素の関与が議論されている。活性酸素は、口腔内の好気的細菌によって生成され、活性窒素の生成には、口腔内の亜硝酸還元菌が関与している。一方、食品の機能性成分のひとつであるポリフェノールは、抗酸化作用、抗炎症作用を持っている。 今年度は、歯周疾患と食生活の関連を明らかにするために、47名の患者(6〜12歳:8.8±1.5歳)を対象とし、口腔評価指数(Oral Rating Index : ORI)の判定基準をもとにORI≧0を非歯肉炎患者(以下、非歯肉炎群)と-1≦ORIを歯肉炎患者(歯肉炎群)の2群に分け、食事摂取状況と生活習慣状況のアンケート調査を実施した。47名のうち、非歯肉炎群は21名44.7%、歯肉炎群は26名55.3%であった。食事摂取状況に関して、歯肉炎群では「ジャムや蜂蜜」「乳酸菌飲料や果実飲料、ジュース」「砂糖やみりんを使った料理」などの糖類の摂取頻度が非歯肉炎群より高い傾向にあった。生活習慣状況は、両群間で明らかな差はみられなかったが、非歯肉炎群では、間食の量や時間に対する保護者の関与が大きかった。このことは、保護者の食に対する意識が小児の歯肉炎罹患に影響している可能性を示唆している。現在は、両群の唾液に含まれているポリフェノールやその他の抗酸化物質の濃度を測定中である。 これ以外の研究結果として、口腔内での亜硝酸依存の活性窒素生成が中性付近ではチオシアン酸イオンで抑制され、弱酸性領域ではチオシアン酸イオンによって促進されること。また、コーヒーに含まれるグロロゲン酸が、亜硝酸の代謝で生成した活性窒素を消去できることが分かった。
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