研究概要 |
"食塩水滴からの水の蒸発に伴う食塩結晶析出"を中心主題とした物質理解の為の新しい探求型化学実験教材の開発・実践とそのWeb化を行うことが本研究の目的である。18年度の「結晶析出に影響を与える因子の制御法の開発」, 19年度の「これら因子のうち注目する因子以外の因子は固定し, 注目する因子の値を変えた場合の食塩析出過程に対する影響の調査」の成果のもと, 本年度は, 主に, (1)この主題理解の為の基礎的・周辺的知識の演示実験教材の開発と動画化, (2)結晶析出過程のデジタル動画化, を行った。 (1) 初めに, 本主題を理解する為に必要な科学知識の明示とそのコンセプトマップ化を行った。このコンセプトマップは, 以下の内容を配置し構造化している。(1)質量保存則に関する内容(水+食塩の質量は溶解前後で変化しない), (2)食塩の構成元素に関する内容(食塩はナトリウムと塩素からできている), (3)塩化ナトリウムの結合に関する内容(イオン結合), (4)水分子の分極に関する内容, (5)原子の内部構造に関する内容, (6)溶液の飽和の原因に関する内容(化学変化とエントロピー変化), (7)電磁波に関する内容, (8)再結晶に関する内容である。次に, (6)を除くすべてについての演示実験を開発し, その動画化をおこなった。 (2) 顕微鏡とハイビジョンデジタルビデオカメラを用いて, 食塩水滴からの水の蒸発に伴う食塩結晶析出過程の動画化を行った。この際, 温度一定の下, 食塩水滴の表面積と湿度を色々な値に制御する工夫を施し, 結晶析出過程に食塩水滴の表面積と湿度が与える影響を"食塩水滴中の過飽和度"をキーワードとして考察できるようにした。その上で, 実験ではどうしても制御できない因子もあることも示した。
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