研究課題
本研究は、高等学校理科における理科教育の改善のために、学習内容や教材および指導方法の検討を行うことをおもなねらいとしている。平成19年度は、(1)科学的素養(科学リテラシー)や探究活動に関する調査、(2)高校生と大学生を対象にした科学的素養の習得状況の分析、(3)自然科学の各領域における新しい教材開発に関する基礎調査、を予定した。(2)については、調査問題や分析の観点が未整理であったため、実施を次年度に見送ることとした。得られたおもな知見と考察は次のとおりである。イギリスの理科教科書における科学的探究では、単に知識を問うような設問は最小限になっている。表やグラフの数値をもとに、科学的事象の特徴を読み取ったり、実験の手法について具体的に回答させるような設問が含まれている。また、グラフから事象の特徴を読み取ったり、結果をグラフに示したりするなど、実験の手法について具体的に評価する設問が見られる。科学的知識、実験の手法に関する生徒の理解度を多面的に評価するようになっている。自然科学をひとつの体系としてとらえ、自然を総合的に見る資質を高めようとする場合、ひとつの方法として、科学の歴史を学習者が追体験するようなアプローチが有効と考えられる。科学の方法や科学者が研究において行う手法を学ぶことがこれにあたる。日本の現行の高校理科教科書において、科学の歴史を重視した学習内容の扱いは「理科基礎」以外には見られない。他の科目においても、「科学とはいかなる営みか」という視点から、教材を開発する必要がある。そのことを通して、科学や科学的探究に関する生徒の理解が多面的に深まるものと考えられる。
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宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 30
ページ: 519-528