研究概要 |
本年度は、数学的活動の中で、特に、数学的モデリングに焦点を当て、その授業における共同思考のあり方について考察した。数学的モデリングはオープンな活動であるため、生徒の考えをいかに手助けしてよりよい方向へと導いていくかという教師の評価と手だてがポイントとなる。また、その際、生徒同士で討論する機会を設け、共同思考を積極的に取り入れていくことが、生徒の考えをよりよく促進する上で奨励される。 そこで、数学的モデリングの指導において共同思考を取り入れていく際の論点として,「生徒が一人で考える場と集団で考える場の組織」,「共同思考における数学的モデリングの全過程と特定の段階だけの取り扱い」,「生徒同士の話し合いの組織」の3つを取り上げ,各々の論点について,指導への示唆と今後の課題についてまとめた。これらの論点は、共同思考において、教師がどのように関わっていけばよいかを考える上で参考となる。特に,3つ目の論点に関しては,教師が見分けるべき生徒同士の討論の状態を「期待される方向とは異なる方向へ討論が進展している状態」,「議論されるべきことが議論されずに,討論が進展している状態」,「多様な論点が出されているが,それらが整理されず混沌としている状態」,「現状を打開する考えが浮かばずに,討論が停滞している状態」の4点にまとめ,各々において,数学的モデリングにおける特定の考え方との関連性を考察した。上記4つの類型は,教師が生徒同士の討論にどのように介入していけばよいかを考察する上で参考になる視点である。
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