研究課題
数学的活動の基本的な性格として、「主体性」、「社会性」があること、並びに、その質を高めていくための観点を明確にして指導に臨むことが肝要である。「主体性」に関しては、どのような数学的な問いかけに焦点を当てるのか、「社会性」に関しては、自分なりの表現から他者を意識した表現方法へと移行する中で、いかに普遍的な理解へと繋げていくかが論点となる。そして、数学的活動と数学的知識の獲得に関して、次の注目すべき数学的活動の性格を考察した。(1)数学的構造を内包した具体の中での豊富な活動を行い、背後にある構造をみとり表現することで抽象化が促進される。(2)数学的活動にはこれまで獲得した数学的知識が根底から覆され拡張されたり統合されたりする活動と、これまでの獲得した数学的知識を総動員して用いることで解決可能な問題場面を広げていく活動がある。そして、数学科カリキュラムは、革命的な知識獲得が節目となって要所要所に位置づけられ、その節目と節目の間では、累積的な知識獲得がなされると解釈できる。革命的知識獲得は累積的知識獲得の延長線上に位置づけられる。(3)どんな数学的活動においてもその所産として数学的知識が成長している。それゆえ、概念形成と応用といった二分法で授業をわけるのではなく、数学的活動を振り返り、これまでの数学的知識がいかに変容したかを明確にした指導が期待される。(4)数学的活動により次の学習に関わりのある新たな目的や問いが生成される。ただし、意図しないものも同時に生成される。「なぜ今これを学習しているのか」という学習の意義を明確にして学習に臨めるように教材や指導系列を工夫すると共に、教師も学び手である点に留意する必要がある。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
日本数学教育学会誌 90
ページ: 56-64
The first century of the International Commissionon Mathematical Instruction(1908-2008), Reflecting and shaping the world of mathematics education
ページ: 85-90