数学的活動と概念形成とを関連づけるために、問題を解決することだけで終始することなく、児童・生徒の内的な世界に数学をつくりあげていくことを目標とする。具体的な世界(主に現実世界)で生じた問題を解決することが目的か、抽象的な世界で生じた問題を解決することが目的かを見きわめ、「互いが互いを成長させる」をモデル主義の核心とする。具体的な世界の問題を解決するために、児童・生徒の内的な世界に抽象化モデル(数学的モデル)がつくられ、つくられた抽象化モデルの適用範囲を広げたり、部分(構成要素)としての抽象化モデル同士の関係を明らかにしたりすることで、抽象的な世界に数学というシステムを構築していくことになる。モデル主義に基づく数学教育の特徴として、下記の3点をあげることが出来る。 1.現在の数学教育では、児童・生徒にとって「現実→算数・数学」という流れを中心に、数学概念の構成を意図している傾向にある。しかし、モデル主義では、「現実→算数・数学」と「算数・数学→現実」といった流れを相互に関連されながら、児童・生徒の内的な世界に数学を構築していくことを意図している。2.モデル主義における数学教育の展開では、拡張、統合のプロセス、単純化、特殊化のプロセスが、当然のプロセスとして学習展開に組み込まれる。数学的知識は、直線的累積的に成長していくのではなく、ある時は急激な変化で革命的に変化することが当然の帰結として強調される。3.抽象化モデルは、当初対象としていた内容以外の、未だ気づいていない内容を具体的な世界に内包していることを暗示している。また逆に、抽象的な世界での考察を、具体的な世界で意味づける行為は、2つの世界の関連性を構築していることであり、両方の世界をいったりきたりすることで、その本質を明らかにすることができる。
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