第1年次において、比例的推論をベースとしながら乗法・除法で意味づけられる問題場面を扱う学習活動を小学校4年生で実施し、これを記録したが、第2年次の研究の一環として、このデータの初期的分析を行った。この活動では、数直線の上で乗法構造を意識化するための矢印表記を児童自身にかかせることを重視したが、データの分析から、今回のような学習活動をあまり経験せずに類似の問題に取り組んだ4年生の解決過程を記録した以前のデータに比べ、児童たちが数直線上での矢印をかく操作を通して数値間の乗法関係に注意を向けることが可能となっており、それにより必要な下位単位を作り出すことが柔軟にできるようになり、比例的推論をより自覚的に使えるようになっている様子が見出された。 児童たちがこのように比例的推論を自覚的に利用できるようになっていることを確認した上で、比例的推論を基礎としたカリキュラム開発を具現化するために、小学校5年生で学習する内容で乗法構造を扱う「割合」単元を、比例的推論をベースにした形で構想した。割合概念の学習について比例的推論を生かしながら"ものの程度"を考える学習として捉え直すとともに、比例的推論により支えられた割合やそれに関わる乗法構造を意識化するためのツールとして、4年生でも学習した矢印表記を伴った数直線を取り入れた。このように構想された「割合」単元の学習活動(45分の授業で13時間相当)を、小学校5年生のクラスにおいて実施をした。実施にあたっては、クラス全体の様子を2台のビデオカメラで捉えるとともに、学習過程臨床的な考察に生かすため、5名の抽出児童の様子をそれぞれ1台ずつのビデオカメラで記録した。
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