第2年次においては、小学校5年生の「割合」単元を、比例的推論をベースにした形で構想するとともに、実際の小学校5年生の1クラスにおいてその1単元の授業を実施し、クラス全体の様子、および5名の抽出児童の1単元分の学習過程をそれぞれ1台ずつのビデオカメラにより記録した。第3年次においては、このビデオ記録をもとに、子どもたちにどのような学習過程が生じたのかの分析を試みた。本研究の枠組みである比例的推論の利用、以前のデータの分析から見出された図などの外的表象への働きかけといった点を視点としながら、抽出児の学習過程を分析することにより、中学年に育成してきた比例的推論とその意識化を促す外的表象の利用を通して、児童が既有の比例的推論との関わりで割合を多面的に意味づけていくこと、割合に対する量的な感覚を保ちながら学習を進めることが可能となったことが示された。一方で、意識化については期待した乗法的関係の意識化により割合の3用法の判断を行うことができた児童もいたものの、量的感覚に基づく半思考的機能とでも呼ぶべき状態が続く児童も観察され、表象の表現機能から思考機能への移行が予想していたよりも困難であるとの課題も浮き彫りにされた。 また第3年次においては、第2年次に上のような学習を経験した児童が、第6学年の分数倍を含む割合の学習内容を同様の原理で学べるよう、その学習活動を開発し、6年生2クラスで実施した。その際にも、5年次と同一の抽出児童5名について、その学習過程を個別に記録した。
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