研究概要 |
本年度は,前年度に引き続き基礎的データの収集を行った。竹下は生物の生育状況の調査を,古賀は水質など物理・化学的要因の調査を,山崎は土地の所有者など地域との連絡および水田ならびに里地全体の地形や地質について調査を行った。 生物の調査では,主として棚田,河川,ため池,里山における生物の生息状況を記録するだけでなく,環境要因との関係を考察することを目的とした定点観測など,より詳細な調査を行うための予備調査も行った。水質は,電気伝導度,溶存酸素量,各種イオン濃度などについて測定した。地形については地図をもとに解析し,地質は岩石試料の採取だけでなく,ジオスライサーによる土壌や河川やため池における堆積物の採取により,周辺の短期的環境変化との関係を読み取る試みを行った。環境要因については,環境測定装置(データロガ)を用いて日周的な変化や季節変化の記録を試みた。本研究により得られた各種データは,コンピュータに保存・蓄積された。得られたデータの一部はフィールドマップにまとめられ,現場で用いられる学習材の例として研究論文によって公表した。 前年度および本年度で蓄積されたデータを元に検討した結果,実際に環境学習の場を想定した場合,本研究における「里地ビオトープ」は,エコミュージアム的な発想によって構築されることも可能であるとの結論を得た。すなわち,狭所的なフィールドをサテライトとし,そのサテライトの集合体を「里地ビオトープ」とみなすのである。そのためには,その「サテライトビオトープ(仮称)」を単独で孤立したものではなく,相互の環境的関係を基にした位置づけを考慮する必要がある。次年度はこの点に留意し,そのエコミュージアム的な里地ビオトープの可能性についても更に検討を行予定である。
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