研究概要 |
本研究は,森林科学を体系的に学習するための優れたツールである樹木年輪を用いて,森林を構成する樹木の仕組み,そして森林そのものの仕組み,そして人類がこれまでに森林環境に及ぼしてきた影響などについて,障害者そして健常者が分け隔てなく学ぶための教材を開発する。また,教材を使用した森林環境教育の実践的研究をとおして,体験学習プログラムの開発と指導者育成プログラムを開発することを目的としている。最終目標として本研究では特に,視覚障害者の中から森林環境教育の指導者を育成し,視覚障害者を指導者として活用することの意義について実践的研究を通して実証する。また,先進事例として日本および世界に広く研究成果を普及することを目指す。 平成18年度は,視覚障害者向け年輪教材の数と種類を増やす作業を開始した。この作業は平成19年度にも引き続き行う。また,視覚障害者向け森林体験企画を2回実施し,新たな教材を開発した。その際,林内散策用障害物探知センサーの開発用に購入した視覚障害者用障害物探知センサーを応用し,森林散策に適用する際の仕様について研究を行った。一方,環境政策,環境教育の先進地であるドイツ・ハンブルグにおいて,環境教育活動における障害者への対応状況と,森林環境教育活動に関する事例調査を実施した。日本の自然保護協会にあたるBUNDと野鳥の会にあたるNAVUさらに,視覚障害者が指導者として働く団体であるDIDでの聞き取り調査の結果,少なくとも調査地では視覚障害者向けの森林体験講座については実践例がないことがわかった。そこで,平成19年度から現地の木材研究所と共同で,視覚障害者向け森林体験講座をハンブルグの森林公園で実施するための準備打合せを行った。一連の研究については,中華人民共和国で開催された国際樹木年輪学会大会と東京で開催された全国視覚障害理科教育研究会にて発表した。
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