(1)研究初年度に当り、基礎文献・史資料の整理と歴史研究の基礎作業としての「留学生年表」(稿)を作成した。[別欄・参照] (2)来日アジア留学生の全体的統計は、従来中国留学生(「清国」「支那」「中華民国」「満洲国」)については、比較的に整理されて来たが、その他の国・地域については殆ど行われて来なかった。また、朝鮮・台湾については植民地であったために、「外国留学生」として扱われた時期とそうでない時期(1929年〜)とがある。「文部省年報」、「高等諸学校統計」の他に本研究においては特に「実業専門学校等入学志願者入学者ニ関スル諸調査」(1925年〜)が有力な統計データを提供してくれた。 (3)留学生統計は、時期的には1940年以降になると中華民国・満洲国以外の留学生については、その把握が極めて困難であり、個別学校毎の作業となる。今年度は、京都大学、九州大学、九州工業大学(元・明治専門学校)で史料調査を行った。戦災被害を受けなかった大学・学校における史料保存状態は良好で、上記の大学は各々「大学文書館」「校史史料室」を設立しており、今後の研究にも便宜を得られであろう。 (4)工業・工学分野になると、大学・高等教育機関としては専ら「官立」校に限定されるので、必然的に、研究作業も限定される。しかし、対象を拡大するとこの分野では、中等学校卒業を入学資格とする「各種学校」(後には私立工業専門学校となった)の存在は大きい。例えば、東京高等工学校(現・芝浦工大)、武蔵高等工科学校(現・武蔵工大)、電気学校(現・東京電機大)などである。これらの学校におけるアジア留学生についての調査研究は、中等学校における留学生の事例と同様に調査次年度以降の課題である。
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