平成18年度の研究実績は以下の通りである。 [1]空気・光・天体認識に関する先行研究の主要な成果について 国内外の幼児・児童を対象とした空気・光・天体認識に関する先行研究を行った。この結果、幼児期における研究は、国内外を間わずほとんど見られないことが明らかとなった。なお、空気認識に関する国内外の先行研究の成果は、「科学教育における幼児の『空気』認識に関する研究動向とその意義」(教育福祉学研究32、2006)にまとめた。 [2]空気・光・天体認識に関する基礎的研究の主要な成果について 幼児・児童を対象に、太陽・月・星といった天体にっいて、(1)天体の正体、(2)天体の概観と距離感、(3)天体の運動、(4)地球と他の天体との区別の4観点から調査した。この結果、幼児は、太陽は熱く、月は冷たいイメージを持っていることがわかった。また幼児は、天体の大小関係を、見た目の大きさで判断していることが明らかとなった。さらに幼児は、太陽・月の運行の仕方について、自分が動くとそれに追随すると捉えていた。何人かの幼児は、月には「うさぎ」や「きつね」などの生物がすんでいるという考えており、その背景には絵本やイラスト等の影響があることが明らかとなった。 幼児を対象に、光について、(1)光の正体、(2)光の存在、(3)光の性質(直進性、反射性)の3観点から調べた。この結果、幼児は、光の色や形について統一した見解を持っていないことがわかった。また幼児は、光の発生源は天体であると認識していた。さらに幼児は、「影」の存在を知っており、影は物体によって光が遮られるためにできるものと認識していた。光の進み方について、幼児は、光が風・空気との相互作用によって曲線を描いて進むと認識していたことが明らかとなった。 幼児・児童を対象に、空気について、(1)空気の物質認識、(2)空気の質量・体積認識、(3)空気の性質(特に弾性)の認識の3観点から調査した。この結果、幼児は、空気は目に見えないが、閉じ込めることによって自由に操作できると認識していたことが明らかとなった。また幼児は、空気が体積置換を起こすことを経験的に認識していたが、首尾一貫した理論は持っていなかった。さらに幼児は、空気の伸縮を直感的に理解していることが明らかとなった。 以上の結果を比較すると、天体に関する自然現象に対して幼児が抱く素朴概念は、光と空気のそれと比べ、虚構性が強く現れていることが明らかとなった。
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