補助金支給期間(平成18年度〜平成21年度)の3年目に当たる本年は、理工系教育の現場(主に授業)で用いられている用語の整理を行った。 本年度は、学生が実際に使用している教科書・教材をサンプルに、漢語の科学技術用語を収集し、その成立過程も含めて文献的な調査を実施した。原語となる欧米語、その意味や用例、ラテン語・ギリシャ語・アラビア語等語源の意味等々を調べ、インデックスを作成する作業を昨年度に引き続き実施した。この作業を進めていくためには、詳細な辞書類や研究書が必要であり、研究費のかなりの部分をその購入に充てざるを得なかった。 昨年度から続けているこの作業は、思った以上に手間暇が懸かり、当初に計画していた学生の科学技術用語の理解度を計るアンケート調査はまだ不完全な状態である。しかし、近代日本において、科学技術の導入・普及に努めた先人たちの、言葉に対する工夫の跡をある程度解明できつつあるように思われる。 現在、本研究は、学生の理解の実態調査(仮の聞き取り調査では、理解度は低い)の後、理工系教育の中で、いかに漢語による専門用語を分かり易く伝え、学習内容に活かしていくことが可能か、という教育方法の開発にシフトしつつある。学生の理解が低いということを解明しても、現場での教育には何も役に立たないからである。 それよりも、専門用語の漢語の成り立ちを、漢字一文字の字義レベルから解き明かし、それが理工系の用語としてどれほど適切に機能しているのかを丁寧に調査・解明し、少しずつでもよいからデータを蓄積していくことが大切であると考える。次年度は、補助金支給の最終年度に当たるため、現在まで蓄積した調査結果を発表し、協力者を得て、実際の授業の中で漢語理解を通じた概念把握の実践を試みたいと考えている。
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