平成18年度においては、まず、盲ろう者・聴覚障害者を対象として韻律情報を呈示するための触覚ディスプレイシステムを開発した。本システムは、マイクロフォン、DSP、触覚ディスプレイ、及びリチウムイオン充電池から構成されている。マイクロフォンから入力された音声は、DSPで処理され、音声ピッチ周波数が抽出される。その周波数に応じて触覚ディスプレイが振動し、触覚刺激によりユーザーに音声ピッチ周波数の値をフィードバックするしくみになっている。触覚ディスプレイは、16mm×4mmの領域に16行2列の触知ピンが配置されており、示指末節手掌部を刺激するように設計されている。振動周波数は200Hzである。 次に、開発した本システムを用いて盲ろう者・聴覚障害者による評価実験をおこない、発話訓練、歌唱訓練への応用可能性を検討した。その結果、触覚フィードバックによる音声ピッチ制御の訓練効果が確認された。 一方、評価の結果、次に挙げる研究課題が確認された。 (1)聴覚障害者の場合は、視覚を利用することが可能なので、触覚刺激と視覚刺激を併用できるよう、視覚刺激呈示機能を付加する必要がある。 (2)先天的な聴覚障害者を持つ場合は、音声ピッチの感覚フィードバックのみでは十分なピッチ制御が難しい。これは聴覚経験がないためであるが、効果的な訓練方法の確立が必要である。 (3)訓練指導者のモニタのために、触覚刺激部の付近にLED表示を付加する。 平成19年度においては、上記の研究課題を踏まえた上で研究を実施する予定である。
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