本研究は、学習者のグループ構成により、学習効果を高めることを目的としている。そこで、まず、ヴィゴツキー理論による「媒体もしくは学習者」を媒介とする学習についてまとめ、さらに、K.ガーゲン、M.コール、Y.エンゲストロームらによる社会的構成主義についても理論を整理し、教授-学習論の枠組みを検討した。 次に、グループ学習の一つといえるワークショップに焦点を当て、メンバー、コーディネータ、ファシリテータの役割を分析した。一般募集の物作りワークショップに参加するだけでなく、自らワークショップを主催し、メンバーの発言や行動を記録した。さらに、自身が担当している授業においてもグループ活動形式を採用し、いろいろなグループによる、資料収集、調査、発表などの活動記録を蓄積した。 これらのグループ活動における学習者の役割、学習効果の測定について、グループ構成員の要素(たとえば、年齢、経験、知識、所属する文化圏)などのばらつきがあるほど、コミュニケーションが活発になり、結果として学習効果が期待できることが明らかになった。たとえば、ある授業の中でのグループ構成の場合、同じ学部・学年で構成されたグループより、学部の違う学生、大学院生と学部生、社会人経験のあるもしくは現役社会人の学生などが混合したグループの方が、グループ内でミーティングを行う回数が多く、メールのやりとりも多い傾向にある。一般募集のワークショップの場合はこの傾向が顕著であり、はじめて会った人同士がコミュニケーションを図ることのできる環境作りが重要であることがわかった。 一方、多民族・多文化国家においてはこのようなグループ構成要素の違いは日常的であるため、フィンランドの教育について調査を行った。その結果、問題解決がコミュニケーションの基本にあること、そのためにはリテラシー(文字もITも含む)が必要であることが明らかになった。
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