研究概要 |
本研究は,インストラクショナルデザインの手法およびIRT(項目応答理論)に基づいて、学生に最適な教材を提供するための教育手法に関するものである。平成19年度は以下の3点を実施した。 1.調整されたテスト項目によるプレースメントテストの実施と能力の推定 平成19年度新入生(約400名)に対してコンピュータリテラシに関するプレースメントテストを実施し,入学時の学生の能力値(スコア)をIRTによって推定した。スコアの分布を過去のデータと比較分析した結果、(1)テスト項目を調整したことによる違い、(2)昨年度以前の入学生との違い、(3)習熟度別クラス編成にしたことによる違いはいずれも見られず、学生の能力値がこのテストで安定的に測定されているという望ましい結果が得られた。 2.構造化された教材モジュールによるコンピュータリテラシ教育の実施 インストラクショナルデザインの手法を用いて平成18年度に開発した教材モジュールを本年度導入したE-learningシステム(BBLS)上に構築し、平成19年度新入生に対するコンピュータリテラシ教育を実施した。授業終了後のアチーブメントテストの結果によって達成度を評価したところ、プレースメントテストにおいてスコア450以下だった学生(ほぼ半数)の割合が5%以下に減少した。また、各クラスによって教員による違いや,学生の学習行動の違いによるスコアの変動は小さいことも確認され、この教材の有効性が客観的に示された。 3.学習履歴情報の分析および能力と教材の関連 E-learningシステム上に記録された学習履歴統計情報およびモジュール毎に設定した学習アンケートの結果をIRTによって分析し、各学習モジュールの内容がどの程度既知であったかの指標となる「知識度」を算出した。この知識度と能力値の向上データの関連を調べることで、学習内容が既知である教材モジュールをスキップする場合の確率シミュレーションを行い、今後リメディアル教育を行う際の問題点を検討した。
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