研究課題
基盤研究(C)
コンピュータリテラシは現代の日本の大学教育で必要とされる基礎教育の一つである。しかし、個々の学生の事前のスキルのばらつきが非常に大きいことから、効率的に教育するためには個々の学生に最も適したオプションを提供できるような内容にしていく必要がある。これまでに大学1年生のコンピュータ利用能力を4年間に渡って項目応答理論を用いて測定してきた。本研究の目的はIRTスコアと対応して学習モジュールを選択するための方法を開発することである。学習モジュールの開発設計にはインストラクショナルデザイン理論を適用した。インストラクショナルデザインによって細分化された学習モジュールと学生のIRTスコアがうまく関連付けられていれば、個々の学生が事前知識に応じた学習モジュールを選択することが可能になる。この発想はいわゆる適応型学習モデルの一つである。この目的のために、まずその学習モジュールの内容について1年生の事前知識の有無の調査を行った。次に、学生のIRTスコアと、その学習モジュールについて事前知識を有している確率を、2母数ロジスティックモデルによって関連付けた。このように関連付けることで、IRTスコアに対応した学習モジュールを選択する際の指標が得られる。この指標を「知識度」と名づけ、この指標は特定のIRTスコアをもつ学生に学習モジュールを提供するための判断基準として用いることを提案した。適応型学習という場合、学習モジュールごとに筆記試験や実技試験を行って学習すべきことを一つ一つ判定していくやり方もある。インストラクショナルデザイン理論では学生はモジュールの難易度にかかわらずすべての試験をうけねばならないのに対し、ここで提案した方法ではそのような負担が軽減され、より少ない試験や調査で学習モジュールを選択可能という特徴がある。この手法は今後のリメディアル教育に役立つものと期待される。
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