研究概要 |
本研究の目的は,複数の参加者が一部は対面で一部は遠隔地より参加する対面遠隔混成のゼミにおいて,個々の参加者が,相手と生身で対面しているか遠隔で映像ストリームを経由して対しているかに関わらず,誰とでもできる限り心理的に等距離で自由にコミュニケーションできるような環境を検討することにある。コミュニケーションを支える要因として視線などマルチモダリティに着目し,マルチモーダルな会話を幾分でも可能とする遠隔ゼミ環境のプロトタイプを構築し,コミュニケーション評価実験や模擬ゼミの試行によってその有効性を検証する。 平成18年度は,三重県立看護大学と岩手県立大学それぞれに,研究分担者の橋本らが開発する高精細映像通信ミドルウェア(MidField)を使用した高精細映像通信環境を整え,被験者(一グループ三名)に,全員対面の場合と,一対二に分かれた場合四種(後述),計五つの環境で対話してもらい,環境に対する主観評価(質問紙)と会話記録(録音資料)を得た。一対二に分かれた場合,遠隔地の一名は以下a)〜d)の映像のいずれかを得る.a)2名のミドルショットの一画面;b)2名どちらか1名のみのバストショット一画面;c)2名夫々のバストショット(一画面で切替);d)2名夫々のバストショット(二画面常時並置).被験者の主観評価では,d)が最も高く,次にa)とc)で評価が割れた.会話記録をスクリプトにおこし,発話調整発言,言いよどみ,発話の重なり,発話間の間,発話継続時間,話者交代(の偏り)などを定量的に分析したところ,発話調整発言と言いよどみは,a)やd)と比べてb)とc)で有意に多かった.対話相手の様子を観察できないことや視線交差が不自然であることが,スムーズな会話を妨げる要因となっているものと解釈することができる.他の指標については現在分析中である.
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