研究概要 |
本研究の目的は,一部が遠隔地から参加する対面遠隔混成ゼミにおいて,個々の参加者が,相手と生身で対面しているか映像ストリームを経由して遠隔で対面しているかに関わらず,誰とでも心理的に等距離で自由にコミュニケーションできる環境を検討することにある。 一グループ三名の被験者を一対二に分けた予備実験では、発話者の表情がわかりアイコンタクトがとれる他に、相手側複数参加者間のインターアクション(場全体の様子)が分かり、必要に応じて非発話者の表情も確認できることが必要と示唆された。しかし、従来の単一方向性カメラを利用したTV会議システムでは、場全体の視野映像を提供しつつ参加者夫々の表情映像も提供することは困難である。複数カメラやパン・ズームを多用することは、システムや操作を複雑にし、参加者に違和感・威圧感を与える恐れも大きい。 そこで、360度撮影可能なカメラ(全方位カメラ)を複数参加者が囲むプロトタイプシステムを構築し、改良を重ねた。(1)環状映像の展開パノラマ映像と単一方向性カメラの俯瞰映像を併用するもの、(2)複数マイクで発話者を特定し、単一方向性カメラで発話者をズーム撮影するものを試み、最終的には、(3)高解像度Gigabit Ethernet全方位カメラと無志向性型マイクスピーカーを用い、細部まで分析可能な超高精細パノラマ映像を有するシステムを構築した。従来テレビ電話に用いられるCIFを基準解像度とした場合、一地点8名前後までの参加が可能である。システムの高性能化、簡素化、ユーザビリティ向上が図られた。 遠隔地講師が参加者を指導するメンタルヘルスケア・グループカウンセリングに導入したところ、参加者はシステムに対する違和感を持つことなくお互いとも講師とも会話することができ、講師も参加者個々の表情や動作、参加者間インターアクションを分析可能であり、システムの有効性が確認できた。
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