研究概要 |
発見的学習の手法は初等中等教育等の教育現場で積極的に活用されており,学習者の自主性や創造性を育成する上で極めて重要である.一方,メディア技術の急速な発展により,コンピュータ上で,より現実世界に近い感覚での体験を支援することが可能なバーチャルリアリティ技術が注目されている.そこで本研究課題では,発見学習とVR技術を結合した環境として,没入型VRの教育支援の枠組みを検討し,教育現場で活用可能な基本的システムの枠組みの設計を行った.平成18年度は,特に理科教育の物理(初等力学)を対象領域として焦点を当て,実践可能なプロトタイプシステムの構築を行った.その際,VRの機能として,反力をリアルに感じることが可能な反力デバイスを導入し,没入感が得られるよう,HMD等の高精細ディスプレイとの併用を考慮したシステム設計を行った. 研究成果として2つのプロトタイプシステムの構築が完成した.第1に,滑車の素材を題材とするVR型教育支援システムのプロトタイプシステムを構築した.このシステムを用いて予備実験を行い,基本的機能の動作確認,有効性を確認した.第2に,物体の運動のひとつである鉛直投げ上げの題材を扱えるプロトタイプシステムを構築した.このシステムで学習できる知識には定量的なものと定性的なものがある.前者は投げ上げに関する基本概念の定量的な関係を表した基本公式であり,後者は速度の変化やエネルギーの変換に関する定性的な性質である.本システムでは,学習者が与えられた問題に解答し,仮想実験室の実験を通じて確認するプロセスで進めることを想定した.学習者が主体的に実験環境を設定しながら問題を解くプロセスを繰り返すことで学習することが可能なプロトタイプシステムが完成した.
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