本研究は、教材コンテンツの開発・作成を中心とした音楽教育における体系的なe-1eamingシステムの構築とその検証を目的としたものである。音楽教育における講義形式によるe-learningシステムの研究は、本研究を除き、ほとんど行われていない。特に、従来は個人教授、少人数グループレッスンでのみ行われていた音楽的基礎能力の育成プログラムを講義形式のカリキュラムに組み込んだのは、本研究が唯一のものであると自負している。 今年度までに、音楽教育の基礎である「楽典」に関する体系的なe-learningコンテンツの構築が完了した。本コンテンツは、講義内容と完全に合致しており、予復習にも常時利用可能なWebe-1earningコンテンツとなっている。 本コンテンツは、単に音楽的知識を網羅的に提示しただけのものではない。音楽教育であるから音声再生機能は当然であるが、加えて受講生が能動的に操作するインタラクティブ性を重視しており、楽器演奏のできない受講生にも操作可能なプログラムを各単元の特性に合わせて多数作成して、教育効果の向上を目指したものである。具体的には、楽譜とピアノ鍵盤の関係をバーチャル鍵盤を操作して聴きながら学ぶプログラム、調性を学ぶための可動音階スケール、和音の転回によるコード進行をボタン操作で聴きながら学ぶプログラム、作曲のプロセスを聴きながら学ぶシミュレーション・プログラムなどがある。 本コンテンツは、講義に使用しながら内容を検討し、質・量共に拡充してきた。現在、「音楽」と「音楽情報デザインI」の2科目全範囲のコンテンツが完成している。受講生による授業評価アンケートでも好評で、講義に対するモチベーションの向上に効果があった。 教育効果の向上についても、予備調査段階で効果が認められた。今後はより厳密な調査により効果を確かめたいと考えている。
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