本研究の目的は、従来の4:3ないしVGAで制作されているe-Learningコンテンツを、ハードウェアからソフトウェアまで、具体的には、制作・配信からコンテンツに至るまでアスペクト比16:9のワイドサイズに対応した仕様に再構成することである。そのためにe-Learningコンテンツのワイドアスペクトの画面対応を研究する上で、単に比率の拡大だけではなく、放送分野で一般的になりつつあるハイビジョン解像度での流通を視野に入れている。すなわち、比率の変化と同時に解像度の変更も対象としているのである。デジタルハイビジョンが牽引するこのワイドアスペクトのメリットは、単に画面が左右に拡張されるだけではなく、解像度が現行の教育現場で使用しているPC画面と同等ないしはそれを上回るということである。 2008年度は、2007年度に行ったシステムの検証と評価、およびコンテンツとなる授業内容の作成と蓄積をさらに踏み込んで行い、システム全体の妥当性を客観的かつ詳細に評価することを目指した。ビデオ画像を画面レイアウトに組み込んだ場合のビデオカードによるオーバーレイの品質の検討では、品質に特に問題がないことが確認されているが、ビデオ撮影装置の位置と目線との関連の確認と実際の授業環境でのビデオ撮影画像の品質に関する検討では、予測の範囲内で対応できることが確認されるものの、十分な検討がなされたとは言い難い。そこで本年度は、既存の装置をどのように組み合わせることでコスト的なメリットの有無、表示するスライドショー部分の拡張性の妥当性、そしてスキャニングファイルの挿入などに適したアプリケーションの選択の余地をあらためて検証することで、実際の授業環境での液晶タブレットの操作性および視認性などの検証に加え、オーサリング画像と実際の授業との連携性の確認、必要な教授法の検討などをさらに多角的に行うことを主な計画目標に置くことにした。そして、これらに必要と思われるソフトウェアの基本設計仕様の洗い出し、およびこれらに関連した、ハードウェア的なインストラクション・デザインの構築といった実際の作業を、最終年度の2009年に終了させるため、文字通り最終段階のステージに入ることができた。
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