本研究では、第1の目的として、マルチメディア・コンテンツを含むeラーニング教材の視聴時における注視点を記録し、その分析に基づいて教育効果を認知過程の観点からとらえることを目指しており、そのための実験を実施した。ナック・イメージテクノロジー社のアイマークレコーダEMR-NL8を使用して取得した注視点データを、解析ソフトEMR-dFactoryで分析した。このソフトウェアでは、実験協力者が見ている画面をAVI形式でデータとして取り込むことができるため、注視点の位置をピクセル単位で出力する従来の機能に加え、指定した領域内で停留した回数や時間のデータの出力と画像表示、停留点の移動パターンの図示などが行える。実験から以下のことが明らかになった。まず、テキスト情報の表示に関しては、注視時間や注視の回数が記憶を促進せず、注意を喚起するような色付けやマーク付与を行ったとしても、後のテストにおいて成績を高める効果が得られなかった。また、アニメーションを使った図示では、講師の話と連携し講義を補足するような画面提示がある場合には、図と講獅の顔とにバランスよく注視が配分され、よく理解され記憶されるものの、講師の話をうまく補足しない場合には注視の効果が見られないことが示された。 第2の目的であるマルチメディア・コンテンツの作成については、オーサリングソフトXpertを用いて、効果的なeラーニング教材の作成を試みた。教材の作成に当たっては、まずパワーポイントによるスライド作成を行うが、講義内容との連携が必要なので、アニメーションの設定を慎重に行った。その後、スライドはHTML形式で保存し、講義画像の録画と同期させて保存した。「心理学の基礎」の中で視知覚の情報処理過程を取り上げたが、テキスト表示にもアニメーションを使用し、図による表示と合わせて効果的な教材を作成することができた。
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