本研究では、ロボットをハードウェアやソフトウェア単体としてではなく、それを使う人やコミュニティ、活動を含んだハイブリッドなシステムのデザインを試みた。具体的には、幼稚園に企業が開発中のパーソナルロボットを持ち込み、幼稚園においてロボットの使用される環境を整える活動を行った。平成18年度には、幼稚園の教員にも使用可能な、リモコンによるロボットコントロールインタフェースを開発し、ロボットの操作方法を教えることで、教員にとってブラックボックスだったロボットを動かす仕組みが理解され、ロボットにアクセスしやすなり、ロボットの動作についての要望が出やすくなった。平成19年度には幼稚園の教室においてロボットが使用される環境を作るために、教員にロボットの操作方法をインストラクションして、幼稚園でロボットが使用される時間と空間を見つけた。また、父母用に幼稚園のロボットの活動をDVDにして配布した。平成20年度には、幼稚園の母親が関心を持ち、ロボットを動かすサークルの設立をサポートした。サークルのためにロボットのマニュアルを制作し、ロボットを動かす講習会等を行った。そして母親がロボットの動作をプログラムして、幼稚園の子ども達の誕生会において、ロボットを動かして、ロボットが歌を歌って子どもを祝う活動を行った。この結果、母親のように自らロボットをプログラムし、ロボットを動かす新しいユーザーが誕生した。このようにロボットは、ロボットの周囲の人間の活動や、環境との社会-技術的ネットワークの中でデザインされることがわかった。
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