研究課題
平成19年度の研究の目的は、これまで長く議論されてきた第二言語処理における移行不可能説と可能説の当否について、脳科学の最新のテクノロジーである光トポグラフィを用いて、直接的に決着をつけること、さらに、"Narrow Reading"の英語教授法に焦点をあて、その効果を脳科学の立場から検証することであった。Narrow readingの特徴は、ある一定期間、同じ話題に関するいろいろなテキストを読ませることで単語が理解しやすくなり、内容についての背景知識が増強され、読み手の負担を軽減するというものである。第一日目にリーディング課題遂行中に脳活性状態を測定し、ある一定期間のトレーニングの後、最終日に再度脳活性状態を測定し、初日の脳活性状態と比較し、リーディングのトレーニングの脳科学的効果を測定した。特に、教授法の工夫が必要と思われる無活性型(初級学習者)および過剰活性型(中級学習者)の学習者に焦点をあて、読解トレーニングを実施した実験群と実施しない統制群を比較するパイロット実験を試みた。実験群には、Narrow reading(Krashen 1981)の考えを利用した読解トレーニングを5日間実施した。本実験では、「イルカ」に関する読み物を継続的に読むトレーニングを実施し、脳活性度と理解度の変化を調査した。結果として、読解トレーニング後は、無活性型は過剰活性型に、過剰活性型は選択的活性型に近づいた。一方、読解トレーニングを受けていない学習者は、脳活性度および理解度は変化しないことが予測された。本結果から、Narrow readingを取り入れた教授法が、言語処理の自動化を助けることを脳科学的に裏づける結果となった。今後はさらに効果的な教授法を模索していく。
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『英語教育』 大修館 1月号
ページ: 10-13
科学研究費補助金 基盤研究B(2)報告書「脳科学による第1・第2言語情報処理機構の直接的解明」
ページ: 67-82
ページ: 83-98
ページ: 99-112
Review of Economics and Information Studies Vol.8 No.1-2,
ページ: 183-196.