本研究は、多肢選択式の試験問題に焦点をあてて、解決過程の個人差を検出する可能性を探ろうとするものである。特に着目するのは、高次元に統合された能カ-問題解決力や思考力、論理的判断カ-を大問による多肢選択式で測ろうとする問題における、解答過程の多様性と成績の関係である。 本年度は、高等教育で要求される問題解決力や思考力、論理的判断力を、特定の教科や科目に依存せずに測ろうとする目的でこれまでに開発された総合問題を収集すると共に、被験者の解答過程を推定するための手がかりが、問題冊子の余白にどの程度残されているかを検討するために、被験者が問題を解く時に用いた問題冊子と解答データを収集した。 被験者は解答過程を書き残すよう指示されていなかったが、演繹的な推論を要求される問題や空間把握を要求される問題では、問題冊子の余白に図やメモ書きを残した被験者が多くみられた。与えられた文章の論理構造を把握したりする問題では、相対的に余白への書き込みは少ないものの、文章中に下線を引いた被験者がみられた。 余白に書き込みがみられた問題については、書き込まれた図やメモ書きのタイプの分類を行って、解答過程の推定作業を行っているところである。今後、推定された解答過程と試験成績との関連についても分析を進める予定である。さらに、次年度は、被験者が余白に書き込む傾向が強い問題について、解答中の時間経過にも着目した分析を進める予定である。
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