研究概要 |
本研究は,多肢選択式の試験問題に焦点をあてて,解決過程の個人差を検出する可能性を探ろうとするものである.特に,高次元に統合された能力--問題解決力や思考力,論理的判断力--を大問による多肢選択式で測ろうとする総合問題の解決過程に着目した.総合問題として,被験者が用いた問題冊子,と解答データを入手して,解答過程の多様性と成績の関係を分析した. 総合問題のうち,歩く方角や曲がる角度に関する記述が与えられて,その記述から読み取った条件に合う方角や,条件を満たさない方角を選択させる問題に関して,問題冊子の余白に残されたメモ描きをもとに各受験者の解答方略を推定して分類した.複雑な条件を吟味する必要のある設問では,体系化や抽象化による工夫を加えた多様な解答方略が用いられる傾向や,複数の解答方略を併用する傾向がみられた.体系化や抽象化による工夫を加えた解答方略の使用の有無は,理数系を中心とする教科の得点との間に弱い正の相関を示しており,教科の知識の有無を直接問わない問題においても,その解答方略の違いに教科の学力が反映される可能性が示唆された. 本年度の成果として,これらの分析結果について,日本図学会大会での口頭発表,第13回図学国際会議(13th International Conference on Geometry and Graphics)での発表,『図学研究』への論文投稿を行った.
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