研究概要 |
1 重要文化財美術工芸品空間情報データベースの構築 本年度は、重要文化財美術工芸品9,817件をデータベースに登録し、所有者でグループ化して空間情報データベース化した。ただし、今回情報源とした文化庁のウェブサイトで公開されている国指定文化財の情報には、公的機関であるにもかかわらず所有者や所蔵者が記載されていない場合が多く、空間情報データベースとして利用可能な件数は557件であった。さらに、同一の所有者で名称の表記が異なっていたり、地番の標記の不統一や住所の誤記などにより同一所有者と認識できないレコードが見られた。そこで、データベース構築の過程と、既存のデータベースの問題点についてまとめた。 2 イタリアの文化財防災行政に関する事例調査 イタリアでは、1990年から「文化財危険地図(Carta del Rischio del Patrimonio Culturale)」を構築し、国内の文化財を対象にデータベース化・危険度評価を実施している。2006年11月5日〜11日まで、イタリア・ローマの国立中央修復研究所(ICR)で担当者(アンジェラ・マリア・フェローニ、アレッサンドロ・ビアンキ、カルロ・カカーチェの3氏)への聞き取り調査を行った。フェローニ氏とカカーチェ氏は1990年のシステム構築開始から文化財危険地図に関する業務に携わっている。また、ビアンキ氏は、イタリア南部の文化財の地震危険度に関する総合調査の責任者である。今回、主に下記のような項目について調査を行った。 ・文化財の危険度の評価の定量化に用いられる指標および危険度の算出方法 ・文化財危険地図構築の歴史と文化財・文化活動省の文化財危険地図に対する態度の変化 ・データベース構築の組織とデータ管理方法 ・イタリア南部での地震危険度に関する総合的な調査 ・インターネットを経由した地方の文化財監督局の参加のありかたと参加を促す手法
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