研究概要 |
平成19年度は,南海トラフに面した室戸岬において採取された完新世隆起石灰岩コア試料の高精度画像解析を行い,昨年度までに分析済みである石灰岩を構成する生物種の構成比による岩石タイプを決め,それらが変化する境界線を厳密に決定した。昨年度購入した,コアから微量の試料を正確に採取できるマイクロサンプリング用の専用ドリルによって,地震発生層準と考えられる石灰岩タイプの境界線前後の試料を採取し,数点の放射性炭素年代測定を行った。同じ層準から採取した試料をウラン系列の年代測定法によって年代を計測し,放射性炭素年代の暦年補正を行うための海洋貯留効果補正値(ΔR)を求める予定であったが,年代測定装置を保有する海外の研究所との調整が年度内につかず,現在も交渉継続中である。また,年代測定用の試料採取と並行して,酸素同位体比,炭素同位体比を計測するための試料採取および同位体比計測も行った。これは石灰岩タイプが変化する境界線付近では,プレート境界で発生する地震に伴う地盤隆起によって,一時的に石灰岩が離水した際に,雨水等によって炭酸塩の置換が起こった可能性があり,その場合は同位体比にスパイク状のシグナルがでるという仮説のもとに行った分析である。最終的な分析結果は現在取りまとめ中であるが,ほぼすべての目視で判別した境界線付近において,酸素同位体比も炭素同位体比もほぼ同様に数値が有意に小さくなるシグナルが検出された。二つの変数の相関係数は0.94ときわめて関連性が高い。最終成果報告書には分析・考察結果をまとめる予定である。また,本年度は本研究の最終年度であることから,本研究テーマの発展的展開を図るため,南海地震の地形的証拠として知られる,和歌山県串本町橋杭岩付近に分布する津波石および離水波食地形に関する資料収集も行った。
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