ツキノワグマ等の大型野生動物の季節遊動とブナ科堅果類の豊凶の関係を明らかにするために、兵庫県全域を対象にブナ科堅果類の豊凶調査を2006年の9月に行った。調査対象はブナ、ミズナラ、コナラの3種で、調査地点はそれぞれ206地点、14地点、15地点である。 前年の2005年9月に行った調査結果と併せて現在までの結果をみると、各樹種の豊凶は地域的に同調する傾向があること、県内では2005年はブナを中心に堅果類は全般的に豊作だったのに対し、2006年はブナ、ミズナラ、コナラの3種が凶作であったことが明らかとなっている。県内におけるツキノワグマの出没が2005年に少なく、2006年に多発していることを考え合わすと、この2年間のツキノワグマの出没と堅果類の豊凶は対応関係が認められる。この結果は、兵庫県においてブナ科堅果類の豊凶とツキノワグマの出没が関係していることを示唆しており、野生動物被害対策を講じる上で本研究の進展が有用であることを示している。 本研究は、今後も継続して新規データを収集することを予定している。今後の予定としては、地理情報システム上で、ブナ科堅果類3種の豊凶とツキノワグマの出没情報のデータを統合的に解析することで、堅果類の豊凶とツキノワグマの出没の関係が明らかにしたい。また、今後は、ツキノワグマのみならずイノシシやニホンジカ等の他の野生動物に関しても、その生息動向や被害と豊凶の関係について、より詳細な解析を行う予定である。
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