研究概要 |
本研究は,堅果(ドングリ)の豊凶の時空間的変動が、大型野生動物の個体群動態や土地利用様式,ひいては獣害発生とどのように関連しているかを,兵庫県域スケールで解明することを目的とした。 ブナ科樹種の豊凶を4年間にわたって県下約220調査地点で観測し,地理情報システム上で,その時空間的変化を分析したところ,ブナとコナラにおいて地域スケールでの豊凶の同調性が認められた。堅果の豊凶が地域的に同調することは,ブナにおいてはこれまでも認められてきたが,本研究では,新たにコナラにおいても同調性が存在する結果が得られた。 豊凶データと,県内におけるツキノワグマ(以下,クマ)の目撃情報データを関係分析した結果,目撃情報の時空間的変動の約9割はブナとコナラの豊凶の地理的変異によって,クマの出没が大きく影響されていることが明らかになった。 捕獲-標識放獣した個体のデータを元に,標識再捕法個体数推定の原理と目撃情報の頻度を組み合わせてクマの生息個体数を推定するモデルを構築した。推定モデルに、年次ごとの豊凶による影響の補正を組み込んだところ,推定生息個体数について現実的で妥当な推定結果を得ることができた。今後,継続的な調査によってモデルの精度が十分確認できれば,地域スケールでのクマの頭数管理のための個体数推定手法として活用することが期待できる。 また,イノシシについても、植生の地理的な変化の影響が、その生息密度に影響していることを,他の要因も含んだ地理情報データの包括的な解析によって明らかにした。
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