本研究では、白老平野の海岸沖積低地を例として、縄文海進の最高海水準期以降、現海水準に至る過程でどのように形成されてきたのか、またその形成過程に気候変動がどのように影響を及ぼしたのかを検討する目的で、 1.白老町別々川左岸低地砂利採取場(Bb-1)と平成18年度に樽前地域で実施されたオールコアボーリング2本の花粉分析からの植生変化の検討 2.平成18年度に引き続き新たに掘られた砂利採取場の露頭調査を含む現地調査や既存のボーリング柱状図資料などの収集などによる地質や地形データの集約 3.得られた試料についてAMS14C年代測定、テフラ分析、花粉及び珪藻分析、植物珪酸体分析などを行ってきた。 これまでに明らかになったことをまとめると以下のとおりである。 (1)Bb-1における花粉分析結果からヨモギ属やヨシ属の出現率の増減により河成作用が活発時期と安定期とが植生変化から読み取れた。 (2)2.8ka〜1kaと過去400年間の二期に河成作用が活発になり上流からの粗粒物質が急速に同平野に供給された。この原因として直接あるいは間接的にも背後にある樽前山の火山活動が関与していると思われる。 (3)0.6〜0.3kaの埋没谷を形成の後、洪水堆積物が充填する堆積が速まる現象は年代的に小氷期とほぼ一致する。この事は、樽前のボーリングコアにおいても同層位から僅かながらもトウヒ属が産出することからも支持された。また、同時に有珠b(Us-b:西暦1663年)の降灰により荒廃した土地に先駆的に進入するカバノキ属の顕著な増加傾向が植生変化の傾向がみられた。
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